Timeless collections

アンティークジュエリーや古い小物のこと

本当にアンティークリング?

自分用に何かアンティークリングが欲しいと思い探しています。

何にでも合うダイヤが好きなのでダイヤのリングを・・・と物色していたらお花の形の

とっても可愛らしいリングを見つけました

 

横から見ると立体的で生きたお花が咲いているかのようです。わぁ!!欲しい!!

と思いましたが、何か変だと思い3か月ぐらい躊躇しています。

ローズカットのダイヤもアンティークらしく素敵です。普段使いにいいなと最初は思いました。

19世紀前半ごろまでによくあったクローズドバックセッティングになっています。

 

ですが、西洋アンティークではこういうデザインのリングはほとんど見かけません。

その時代その時に特有のデザイン、カット(宝石)、よく使われた石、素材があり歴史的な背景により非常に影響されます。

 

もしかして、お花の部分はリングではなかったけれど後ほどリングに作り替えられた??とも考えました。でもこんなお花のデザインがリング以外でもあったかというと、う~ん・・・という感じです。 セッティングやダイヤのカットなどアンティークのような要素はあるのですが・・・。

 

それで説明をよく見ると「19世紀のトルコのアンティーク」とありました。

それもほんとかなぁ・・・?

ジュエリーが優れていたのは流行の中心地であったイギリスやフランスだと思うのでトルコにこういうジュエリーがあったのか??とは思いましたが・・・。精巧な銀細工などのイメージはあるのですがこういった感じのジュエリーはトルコではないイメージです。

とはいえあまりトルコのことは知らないので調べてみました。

 

まずこのリングは14Kです。トルコのホールマーキング制度を調べてみました。

トルコのホールマーキング制度は19世紀を通してゆっくりと衰退し1943年に終了したようです。

1970年代頃から現在に至るまでジュエリーと高級銀細工の生産における世界の主要な中心地ではありますがホールマーキング制度は再開していません。

 

今調べているお花の14Kのリングは売主が19世紀のアンティークと言っていますが1839年~1922年までのオスマン帝国時代後期には経済的また宗教的制限により銀製のアイテム数と比較して限られた量の金製品しか生産されていません。

その結果、ホールマークのある金製品はかなり希少性が高く現存するもっとも有名なアイテムとしてはオスマン帝国スルタンへの奉仕の証として個人に与えられた勲章などがあるようです。

上図はアラビア数字で3種類の金の種類を表した当時のホールマークの例です。

 

ここまでの話では、金製のジュエリーはこの時期極めて少ない(ほとんど無い?)事が推測されます。

ですが念のためお花のリングの売主にホールマークの有無を尋ねました。

「19世紀には制限により金製品は極めて少なかったと思いますが、仮にあったとしたら希少性が高く高価な物になると思います。そういうものにはホールマークがあると思いますがいかがでしょうか?」とお尋ねしました。

予想できた回答ですが、「14Kであることはテスト済みなので保証します。こういうものは何度もサイズ直しをしたりしてホールマークは消えていることが多いです。また罰せられる事を避けてホールマークを付けなかったかもしれません」という回答でした。14Kかどうかを確かめたいのではなくいつのものかを知りたいんですけどね。

 

市民革命・産業革命を経た欧米列強は19世紀にはオスマン帝国の侵略を本格化させます。お花のリングのような金や宝石が贅沢に使われていない比較的安価なジュエリーは

機械化や市民革命の進んだ欧米では裕福な庶民が購入することができました。

ですが、王制であり機械化の進んでいない19世紀のオスマン帝国では、王族や高貴な人々のための贅沢な金製品だけが存在していたのではないかと推測します。

ましてや、宗教や経済的理由から金は制限され銀細工の方が圧倒的に多かった訳ですからなおさらお花のリングのようなジュエリーは存在していなかったのではないかと思います。 中途半端な品を存在させる理由がありません。

 

ではこのリングはいつのものか・・・?ホールマーク制度の無くなった後の物かな~という気がします。デザインや雰囲気自体は可愛いのですけどね。

 

この売主は他にも面白いものを販売しています。

 

19世紀の西洋アンティークだそうです。確かにそのように見えます。ローズカットのダイヤ、ゴールドのリングにシルバーのセッティング、ダイヤの底には銀箔が敷いてあり19世紀前半までの技術であったクローズドバックセッティングです。

 

これは本当に19世紀の西洋アンティークなのでしょうか?次回それについてお話したいと思います。